海外を訪れる際、その国の食べ物を食することを楽しみにしていらっしゃる方も多いことと思います。ひとくちでミャンマー料理といっても、大変に幅広いバリエーションを誇ります。ミャンマーは多民族国家ですので、その食文化も多彩で、味わい深いものが数多くあります。独自の食文化に裏打ちされたユニークなものから、日本食に通じるものまで、実に様々です。

世界的な米の産地であるミャンマーでは、やはり米が主食です。肉や魚、野菜などを、油を多く含むカレーのペーストで煮込んだミャンマー風のカレーは種類も非常に豊富で、土地によって変わった食材を用いているものもあります。ミャンマーでは地鶏が人気で、カレーにもよく使われます。豚肉は脂身が多いものがミャンマー人に好まれます。鶏や豚は肉だけでなく、モツもよく食べられています。ミャンマーでは、牛肉は食べないという人もいますが、お店によっては扱っているところもあります。ヤギの肉は香辛料を効かせることで臭みが少なく、意外に食べやすいです。日本では珍しいですが、ミャンマーではアヒルは肉も卵も人気があります。
ミャンマーは川が国土を貫く国なので、魚といえば川魚が中心になり、特にコイがよく食べられています。エビはミャンマーでもよく食され、そのままカレーや天ぷらに、干したものは様々な料理に用いられる欠かせない存在です。沿岸部など海が近いところでは、海の魚や大エビ、イカ、タコ、貝などといった新鮮な海産物も食べることができます。

お米の国ミャンマーには麺料理も豊富にあります。米の麺にほぐしたナマズの身を煮込んだスープをかけて食べるモヒンガーは、ミャンマーの代表的な麺料理です。小麦の麺に鶏肉とココナッツミルクの入ったスープをかけるオンノゥカオスエは、クセがなく食べやすい人気メニューの一つです。シャン州の麺料理、シャンカオスエはもっちりした米の麺とさっぱりしたスープで、広く食されています。ヤカイン州の名物、ヤカインモンディは青唐辛子の辛みが効いた麺料理で、魚でダシをとったスープと抜群の相性です。

「食べるお茶」、ラペットウもお茶受けには欠かせない一品です。練乳をたっぷり混ぜた甘いミルクティーを飲める街中のティーショップは、それ自体がミャンマーの文化の一部といえるほどに、人々の生活に根付いています。天ぷらや揚げ物などのスナックは、屋台の定番メニューとして広く人気があり、そのまま食べたり、麺料理に乗せたりします。

隣接する中国やインドからの影響も見られます。種類豊富な飲茶や、火鍋風の鍋料理、タミンバウンと呼ばれる中華丼、饅頭や揚げパンまで中華料理の存在感はなかなか大きいようです。また、ナンやサモサ、ドーサ、プーリーといったスナックから、ダンバウッと呼ばれるビリヤニなど、インド料理も親しまれています。こうした本当に幅広い食文化を誇ることが、ミャンマーの魅力の一つとなっています。

最近はファーストフードのチェーン店やモダンなカフェ、ベーカリーなども増えています。近隣の東南アジア料理だけにとどまらず、和食や西洋料理、その他の外国の料理を提供するレストランも多くなってきました。輸入品を豊富に揃える大型のスーパーが増える一方で、生鮮品を幅広く扱う市場は変わらぬ庶民の台所として活気に満ちています。こうした状況を背景に、ミャンマーの食文化はますます多様化が進んでいます。ミャンマーを訪れる皆様にも、豊かな食の世界を楽しんでいただければ幸いです。